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奥山淳志『カナシイホトケ』(みすず書房)出版のお知らせ

青森、秋田、岩手といった土地で伝承されている祭礼を訪ねるようになったのは、21世紀がはじまり、インターネットという新しい技術が世界を呑み込んでいく時期と重なっている。思い返せば初代iPhoneが生まれたのもその頃(2007年)で、あの時代は今の僕たちが生きる世界の〈前夜〉だった。

〈前夜〉のなかで僕たちの心境はどういう状態だったのだろう。時代を俯瞰するという行為は常に未来の側の特権だ。当時の僕たちは、新時代の到来を感じつつも目の前にある動かし難い現実を見つめるしかなかったのだと思う。そんな揺れ動く時代のなかで僕にとっての現実のひとつが東北の祭礼だった。

祭礼は、当時の僕の目には時の忘れ物のように映ることも少なくなかった。しかし、東北という土地を遠望できる窓でもあった。僕は祭礼を視座として、そこから見えてくる“ 今の東北と未来の東北”を考えていこうと思った。それは、二十代半ばで岩手に移り住み、土地にカメラを向けながら生きていこうとした一人の人間にとっての必要な行為だった。そして、その時間は僕のなかに東北の精神世界という地図を描くことになった。

今の僕の脳裏には繰り返されている言葉がある。金木の賽の河原地蔵尊で出会った老婆がカナシイホトケの物語を語り終えた先でつぶやいた「おめえ、なも聞でね。なもかも、わへでけろ」(お前は何も聞いてない。すべて忘れてくれ)というひとことだ。
お婆さんが語ったのは、いわば北辺の地で紡がれてきたメメント・モリだった。名付けられる前の生命の存在を土地に預けてきた物語だった。それを僕たちはもう忘れるべきなのだろうか。無常さと優しさが渾然とした〈カナシイホトケ〉という不思議な存在は、僕たちにもはや必要がないのだろうか。それとも深い井戸の底に手を伸ばすように再び求める日が訪れるのだろうか。僕は今日も東北という土地で、お婆さんの最後のひとことを小さく呟いている。

2026年5月5日
雫石にて 奥山淳志

2026 年5 月18 日 みすず書房より出版予定
A5変形(仮フランス装) 296頁(写真36点) 本体3,400 円

こちらからどうぞ▶︎▶︎▶︎


『カナシイホトケ』出版記念写真展

会場:Title 2階ギャラリー
会期:2026年5月15日(金)〜6月1日(月)
時間:12:00~19:30、最終日は17:00まで
※5/19・20・27日は休廊。
詳しくはWEBサイトへ▶︎▶︎▶︎

第32回林忠彦賞の受賞のお知らせ

井上弁造さんのエスキースをテーマにした私家版写真集『BENZO ESQUISSES 1920-2012』が完成いたしました。

 

本作品により第32回林忠彦賞を受賞いたしました。いつもご支援いただいている皆様にお礼を申し上げます。

受賞記念写真展につきましては、山口県周南市美術博物館(2024年4月20-29日)および、北海道東川町文化ギャラリー(2025年1月17-30日)にてを開催いたします。

ぜひご来場ください。

 

 

 

 

 

『あたらしい糸に』WEBみすずで連載中です。

みすず書房のオンラインマガジン「WEBみすず」にて『あたらしい糸に』を連載しております。
よろしければご一読ください。

こちらよりどうぞ▶︎▶︎▶︎


 

『動物たちの家』販売開始いたしました

2021年8月2日、『動物たちの家』(みすず書房)が発刊されました。
全国主要書店ほか、Amazonなどの主要オンラインショップからでもご購入いただけます。
また、奥山淳志から直接お求めいただくこともできます。
こちらからお願いいたします。

『動物たちの家』online store ▶︎


「庭とエスキース」完成です

2019 年4月16日に『庭とエスキース』(みすず書房)が発売となりました。全国主要書店ほか、Amazonなどの主要オンラインショップからでもご購入いただけます。
また、奥山淳志から直接お買い求めいただくこともできます。こちらからお願いいたします。
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